[天翔艦隊へ]


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上村将軍

作詞:佐々木 信香
作曲:佐藤 茂助

著作権:無信託(詞・曲)

一、
荒波吠ゆる風の夜も
大潮(おおしお)咽(むせ)ぶ雨の夜も
対馬(つしま)の沖を守りつつ
心を砕く人や誰(た)れ
天運時をかさずして
君幾度(いくたび)かそしられし
ああ浮薄なる人の声
君睡(ねむ)れりといわばいえ
夕日の影の沈む時
星の光の冴ゆる時
君海原(うなばら)を打ち眺め
偲ぶ無限の感如何に

二、
時しも八月十四日
東雲(しののめ)白む波の上(え)に
煤烟(ばいえん)低くたなびきて
遙(はる)かに敵の影見えぬ
勇みに勇める丈夫(ますらお)が
脾肉(ひにく)は躍り骨は鳴る
見よやマストの旗の色
湧立(わきた)つ血にも似たるかな
砲声天に轟きて
硝煙空に渦(うず)まきて
茜(あかね)さす日も打ち煙り
荒るる潮(うしお)の音高し

三、
蔚山沖(うるさんおき)の雲晴れて
勝ち誇りたる追撃に
艦隊勇み帰る時
身を沈め行くリューリック
恨(うら)みは深き敵なれど
捨てなば死せん彼等なり
英雄の腸(はらわた)ちぎれけん
「救助」と君は叫びけり
折しも起(おこ)る軍楽の
響きと共に永久(とこしえ)に
高きは君の功(いさお)なり
匂うは君の誉(ほま)れなり

明治三十七年


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