[天翔艦隊へ]


Download

嗚呼桃源の

作詞:田中 新一(陸士二十五期)
作曲:不詳

著作権:無登録

一、
嗚呼桃源の夢の夜に
泣いて機を待つ呑牛児(どんぎゅうじ)
蒼淵(そうえん)の底昇天の
嵐を待つか蛟竜(こうりゅう)は
空舞い昇る大八洲(おおやしま)
竜門低しその旦(あした)

二、
夕べ暮鐘に送られて
ゆくえ白河友もなく
春光まだき陸奥(みちのく)へ
手折りわずらう不香の花
朝暾(ちょうとん)天に冲(ちゅう)しては
珠と輝く蝦夷の山

三、
楊柳の曲今絶えて
左遷悲しき我が配所
夕べ筑紫の波枕
夕陽(せきよう)遠し日向灘
この辺境にわれ立てば
思いや馳せんKD(カデ)の窓

四、
四面に起こる悲笳(ひか)の声
孤城に似たる土佐の里
槌嶺(ついれい)寒き明けの空
沖辺どよめく邪許(やこ)の声
人生孤島に埋もれては
不遇を君よ天に泣け

五、
矛を枕の秋深く
泡沫すごき日本海
孤独寂しき我が任地
越路の空を彷徨(さまよ)いて
重巒(ちょうらん)遠く隔つとも
怠りなせそ蘇武が筆

六、
薫り床しき山吹は
友が忌中の手向け花
緑葉恨み長くとも
その真心の紅の
誰かは知らん三軍の
叱咤の声とは夢だにも

七、
されば歌えよ我が友よ
夢ぞ床しき五年(いつとせ)を
あと百日の名残りとし
袂(たもと)わかたん丘の上(え)に
征衣を払う五月雨(さみだれ)を
渭城の朝の雨と見て

明治四十四年春
中央幼年学校「百日祭」


曲目に戻る

タイトルに戻る