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工兵の歌

作詞:陸士五十二期生合作
作曲:辻 順二

著作権:不詳(詞)、消滅(曲)

一、
聖戦進む大陸に
膺懲(ようちょう)の師の征(ゆ)く所
峻険(しゅんけん)阻む「大別(だいべつ)」も
怒濤(どとう)逆巻く「白耶土(ヴァイアス)」も
正義の戈(ほこ)に抗(むか)うなし
我が襟(えり)の色自信(ちから)あり

二、
剛胆機敏敵陣に
身をもて開く突撃路
轟然あがる爆音に
突撃の機は熟したり
進め!! 義烈の我が戦友(とも)よ
我等が屍(かばね)乗り越えて

三、
敵弾雨飛(うひ)の水濠(すいごう)に
徒橋を肩の人柱
渡る歩兵を励ましつ
仰ぐ敵地の日の御旗
肝に銘ぜし犠牲(いけにえ)の
尊き精華今咲けり

四、
挺身(ていしん)深く潜入し
野に臥すことも幾そ度(たび)
今ぞ臨むや目的地
地軸も砕けむ大爆破
退路遮断の任なりて
敵殲滅の日は近し

五、
暗黒不安を克服し
振う十字に全軍の
信頼(たのみ)を受けし此の腕(かいな)
不落と誇る堅塁も
堅忍持久の誠(まこと)には
など陥落(おち)ざらんことやある

六、
渦く急流はた大河
潮(うしお)は吼(ほ)ゆる敵湾に
暫し命をあずかりて
腕も折れよと漕ぐ鉄舟(ふね)や
唸る機舟の舳(へさき)にも
赤き血汐の飛沫(しぶき)とぶ

七、
興安嶺(こうあんれい)の朝ぼらけ
鉄路確保の先駆(さきがけ)に
轟き降(くだ)る放車をば
其の身と共に葬りし
燦(さん)たり名誉竹帛(ちくはく)に
其の名輝く荒木山

八、
命令一下全軍の
作戦(いくさ)の基礎(いしずえ)此の務め
頭上にとびくる榴弾(たま)浴びて
保線に捧ぐ日本魂
突撃命ず電鍵に
聴け前線の勝鬨(かちどき)を

九、
ああ大陸の雄叫びは
遠く異境にこだまする
八紘一宇(はっこういちう)の聖業に
剛(つよ)き伝統身に帯びて
務め励まむ我が使命
「とび」の名永久(とわ)に光あれ

昭和十三年

 ……第七節の歌詞に歌われている荒木大尉について、私の祖父が後にその場所を訪れており、次のような話を聞かされた。
 前線で駅に停車中の列車を狙って、未占領地の丘陵の上から敵が突放(とっぽう)貨車を放ち、大事故になる寸前に荒木大尉が身を挺して脱線器を装着した。貨車はそらすことが出来たが、自身は逃げ遅れて貨車にはねられ戦死を遂げた。この状況は「ああ荒木工兵大尉」という歌にもなった。

 資料を調査した結果、脱線器の設置を確認した後に逃げ遅れ、転覆した突放貨車に積載してあった石に直撃されての戦死であるようだ。


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