[天翔艦隊へ]


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喇叭の響

作詞:加藤 義清
作曲:荻野 理喜治

著作権:無信託(詞・曲)

一、
渡るにやすき安城(あんじょう)の
名は徒(いたずら)のものなるか
敵のうちだす弾丸(だんがん)に
波は怒(いか)りて水騒ぎ

二、
湧き立ちかえる紅(くれない)の
血潮のほかに道もなく
先鋒たりし我が軍の
苦戦の程ぞ知られける

三、
この時一人の喇叭手(らっぱしゅ)は
取佩(とりは)く太刀の束の間も
進め進めと吹きしきる
進軍喇叭の凄まじさ

四、
その音(ね)忽(たちま)ち打ち絶えて
再び微(かす)かに聞えたり
打ち絶えたりしは何故(なにゆえ)ぞ
微(かす)かに鳴りしは何故ぞ

五、
打ち絶えたりしその時は
弾丸(だんがん)咽喉(のんど)を貫けり
微(かす)かに鳴りしその時は
熱血気管に溢(あふ)れたり

六、
弾丸(だんがん)咽喉(のんど)を貫けど
熱血気管に溢(あふ)るれど
喇叭放たず握りつめ
左手(ゆんで)に杖つく村田銃

七、
玉とその身は砕けても
霊魂天地をかけめぐり
なお敵軍をやぶるらん
あな勇ましの喇叭手よ

八、
雲山万里(うんざんばんり)かけ隔(へだ)つ
四千(しせん)余万の同胞も
君が喇叭の響にぞ
進むは今と勇むなる

明治二十七年八月

 ……日清戦争最初の陸戦である成歓・牙山の戦いで戦死した、喇叭手木口小平の最後を歌うもの。陸軍軍楽隊に在籍していた加藤義清は非常に感激し、わずか30分ほどでこの詞を作り上げたという。歌詞中に木口の名がないのは、まだそれらの情報が伝わっていなかったため。


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