一、
雪の進軍氷を踏んで
どれが河やら道さえ知れず
馬は斃(たお)れる捨ててもおけず
ここは何処(いずく)ぞ皆敵の国
ままよ大胆一服やれば
頼み少なや煙草が二本
二、
焼かぬ乾魚(ひもの)に半煮(はんに)え飯に
なまじ生命(いのち)のあるそのうちは
こらえ切れない寒さの焚火
煙(けむ)いはずだよ生木が燻(いぶ)る
渋い顔して功名噺(ばなし)
「すい」というのは梅干一つ
三、
着の身着のまま気楽な臥所(ふしど)
背嚢枕に外套かぶりゃ
背(せな)の温(ぬく)みで雪解けかかる
夜具の黍殻(きびがら)しっぽり濡れて
結びかねたる露営の夢を
月は冷たく顔覗き込む
四、
命捧げて出てきた身ゆえ
死ぬる覚悟で吶喊(とっかん)すれど
武運拙(つたな)く討死にせねば
義理にからめた恤兵真綿(じゅっぺいまわた)
そろりそろりと頚(くび)締めかかる
どうせ生かして還さぬ積り*
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